柄行を埋め尽くすように一針、一針縫い上げてゆく刺繍の技。
その技術の粋を集めて製作されました、総相良刺繍による袋帯をご紹介いたします。
今回のお品に用いられましたのは、2500年前、中国で生まれた蘇州刺繍。
その精巧な技術と繊細さで、世界最高峰の刺繍技術として評価されています。
蘇州刺繍は蘇繍とも呼ばれ、湖南の湘繍、四川の蜀繍、 広州の広繍(粤繍)があり、これらは「四大刺繍」として広く知られております。
その精巧さは世界の刺繍の中でも最高レベルと誉れが高く、髪の毛ほどの細さの刺繍糸を使ったその仕上がりは、多くのきものファンを魅了します。
その中でも、同国では一般公開が禁止される程の高い技術を集めた”相良刺繍”。
打子刺繍(ダーツ刺繍)とも呼ばれ、その技術を完璧に習得するには20~30年もの鍛錬が必要とされています。
本品のような一枚のお着物には、およそ100万粒以上もの刺繍が施されるそうです。
その数だけでも、製作にかけられた時間と手間は計り知れないものがございます。
幾重にも重なるように、彩り豊かな色糸を用いて表現した、華やかさと上品さを兼ね備えた面持ちです。
その意匠が、全て”蘇州刺繍”によって、ふっくらと立体的に表現され、まさしく、他にはまず見かけることのない帯に仕上がっております。