月別: 2011年2月

特選手織九寸帯 【喜如嘉の芭蕉布】

 

【人間国宝 平良敏子】氏率いる平良家の方々の手によって、丁寧に織り上げられたお品、<喜如嘉の芭蕉布>九寸帯のご紹介です。

琉球の美しい風と、やさしい大地に育まれて生まれた織物、芭蕉布。

「芭蕉布」とは、沖縄手織りの中でも最古の1つと言われており、その名の通り植物の糸芭蕉を原料として織り上げられた布です。
亜熱帯から熱帯地方に生育しますが、適度な寒暖があり、細かい繊維がとれる、奄美・沖縄の糸芭蕉が最も良いとされています。

芭蕉布の大きな特徴は、麻より繊維が堅いため軽く張りがあり風通しが非常に良く、衣類が肌にまとわり付くこと無く、一層さらりとした肌触りがあることです。
猛暑で夏の長い、亜熱帯気候の沖縄に最適な織物として、王族から農民にいたるまで夏の衣類として広く愛用されていました。

また近世から第二次大戦まで、農村では屋敷の裏庭や畑に糸芭蕉を栽培し、自給自足の生産体制が続いておりました。
しかし、かの大戦によって芭蕉布は造る人も材料も廃れてしまい、途絶える寸前になってしまいました。その芭蕉布を復興させ、伝統の技術と美を今に伝えてくださったのが、今回ご紹介するお品を製作した平良敏子氏です。

柳宗悦の『芭蕉布物語』に感銘を受けた平良氏は、倉敷で大原総一郎・外村吉之介両氏に激励されながら、倉敷で学んだ織りの知識を活かし、さまざまな技術改良を加えて、芭蕉布を「重要無形文化財」にまで復興させました。

一枚の芭蕉布ができあがるまでには、気が遠くなるほどの工程を経なければなりません。

それは、糸芭蕉の原木を栽培することから始まります。
野生のものでは硬くて使用できないので、繊維を柔らかくするための工夫をしながら育てるのです。
一反を織り上げるのに、約二百本の糸芭蕉が必要と言われます。

そこから、皮を剥ぎ、木灰汁で煮、しごいて不純物を取り除き、水に浸し、用途に合わせた細さに裂き、結び繋げる…これでようやく糸ができます。

簡単なようですが、大変な労力と時間が必要で、重要な工程です。それから撚りをかけ、整経。
染色用や絣用でそれぞれ異なる処理をし、やっと織る作業へと入ります。

乾燥に弱い芭蕉が切れないように、絶えず湿気を与えながら織ります。
5、6月の梅雨の時期が最適だそうです。
最後に織り上がった反を木灰汁で炊き、洗濯をして仕上げます。

ここまでしてやっと一枚の布が織り上がるのですから、芭蕉布の希少性をわかって頂けるのではないでしょうか。

その手触りは例えようがございません。
心地良いシャリ感に、自然の恵みを感じる節の感触…
まさしく命を織り込んだ至極の布といえるでしょう。

2011年 2月21日  カテゴリー:人間国宝

本場琉球紅型九寸帯 【人間国宝 玉那覇有公】

 

    

国指定重要無形文化財「紅型」の保持者(人間国宝)玉那覇有公氏による、本場玉那覇びんがた九寸帯をご紹介いたします。

玉那覇有公氏は、琉球王朝時代からの紅型三宗家(城間、知念、沢岻家)の一家、城間家14代・城間栄喜に師事し、修行を始め34歳に公募展へ初出品してから数々の賞を受賞。1996年60歳の時、人間国宝に認定されました。

柳宗悦にはじまる民藝運動によって、蒐集された沖縄の布。戦火による消失から救われた古紅型や織物の精緻な型染めもよう、筒引きの力強い色は、多くの人の心に感動を与えました。

もともとは、身分の高い者だけに着用を許され、一般的には禁断の布であった紅型。
廃藩置県によって王朝の庇護はなくなり、戦争によって多くの型紙や道具が失われましたが、そのような辛苦を乗り越えて創作を続けた職人の情熱は失われません。

紅型は、丁寧にひとつひとつ細かな型を彫り、白生地に糊置きをし、顔料・染料を用いて色を挿していきます。
水で糊を洗い流してあざやかな色彩が顔を出す瞬間の感動をお届けさせていただきたいと思います。

各工程に力を注いで、丹精込めて仕上げた紅型。
ひとつひとつの丁寧な手作業と、刺繍や金箔などを使わずに、顔料の発色の鮮やかさと型のデザイン性だけで勝負した染め帯ですので、凛とした美しさが感じられます。

今回ご紹介するのは、玉那覇氏により大変な手間を惜しまずに染めあげたお品です。
琉球の彩り使い…何色もの色を寸分の狂いなく染め上げられました。

絹地には、瑞宝模様を浮かべた「宗薫緞子」地を用いました。
地厚で発色がよく、紅型帯に用いられる事の多い上質生地です。

無地場は青藤色、お柄の背景にはすっきりとオフホワイトと青磁色を交互に用い、鮮やかな横段模様を表しました。

その段の中に浮かぶ、琉球の彩り鮮やかな花意匠。
身の回りの物に題材を得る琉球紅型らしく、芭蕉の葉、葵に茄子をそれぞれに込めて…
帯地にも抜群に映える、美しい仕上がりでございます。

2011年 2月14日  カテゴリー:人間国宝

本場琉球紅型小紋着尺 【人間国宝 玉那覇有公】

  

国指定重要無形文化財「紅型」の保持者(人間国宝)玉那覇有公氏による、本場玉那覇びんがた小紋着尺をご紹介いたします。

玉那覇有公氏は、琉球王朝時代からの紅型三宗家(城間、知念、沢岻家)の一家、城間家14代・城間栄喜に師事し、修行を始め34歳に公募展へ初出品してから数々の賞を受賞し、1996年60歳の時、人間国宝に認定されました。

柳宗悦にはじまる民藝運動によって、蒐集された沖縄の布。戦火による消失から救われた古紅型や織物の精緻な型染めもよう、筒引きの力強い色は、多くの人の心に感動を与えました。

もともとは、身分の高い者だけに着用を許され、一般的には禁断の布であった紅型。
廃藩置県によって王朝の庇護はなくなり、戦争によって多くの型紙や道具が失われましたが、そのような辛苦を乗り越えて創作を続けた職人の情熱は失われません。

紅型は、丁寧にひとつひとつ細かな型を彫り、白生地に糊置きをし、顔料・染料を用いて色を挿していきます。
水で糊を洗い流してあざやかな色彩が顔を出す瞬間の感動をお届けさせていただきたいと思います。

各工程に力を注いで、丹精込めて仕上げた紅型。
ひとつひとつの丁寧な手作業と、刺繍や金箔などを使わずに、顔料の発色の鮮やかさと型のデザイン性だけで勝負した染め帯ですので、凛とした美しさが感じられます。

今回ご紹介するのは、玉那覇氏により大変な手間を惜しまずに染めあげたお品です。
琉球の彩り使い。何色もの色を反物の巻き始めまで寸分の狂いなく、染め上げられました。

一色一色の彩りが心に響くかのような…。
深い深い色彩美には、見るものの心を奪う特別な魅力すら感じさせます。

淡いブルーグレーの優しい地色に、紗綾型を基調に込めて、その中に映える「彩花」を、紅型ならではの彩りの冴えにて表現いたしました。

2011年 2月7日  カテゴリー:人間国宝